"America welcomed me, an immigrant, and that welcome has made my life possible." - Mikhail Baryshnikov 『アメリカがわたしを移民として受け入れてくれてくれた。そのことが私に人生を与えてくれた。』 Bessie Awardの授賞式のはじまりに、偉大なるバレエダンサーのミハエル・バリシニコフが映像の中で言った。 その言葉を聞いたとき、まだ受賞ができるともわからなかった僕はただただ19歳ののときにこのアメリカに来てからのことを思い出して胸が熱くなりました。 NYに来てからの思い出はつらいこ事もたくさんありましたが、自分が何故ここにいるかと言えば 世界各国の様々な人々がひしめきあって、様々な価値観を共有して生きている事に魅力を感じているからです。 ひとたび地下鉄に乗れば、ほとんどすべての人種に出会うことができる。 それがゆえにぶつかり合うことも多いですが、なにより多種多様な人々と一緒に喜び合えたり、理解しあう喜び、 支え合って生きていくことを学ぶことができたことは自分にとっての大きな心の財産になっています。 特に多種多様な観客の前でパフォーマンスする時、なにか共有できる深い部分に一筋の光を常に感じてきました。 知らない国で出会う人達が言ってくれる感想の一言一言に、喜びとやりがいを感じてきました。 そして本当に困ったときには、いつも誰かが助けてくれました。 911でワールドトレードセンターが崩れたときは、同じアパートに住む知らないアメリカ人の家で ブッシュの演説をおそろしい気持ちでみていたこともありました。 タップダンスという文化をとおして、アメリカが抱える奴隷制という悲しい歴史も学び、 その歴史を乗り越えてきたからこその底抜けの明るさや、黒人達のふところの深さに感動しました。 そして彼らが生み出してきたことのすべてに魅せられてきました。 今僕が踊れることは彼らが遺してくれた恩恵があるからです。 日本人、アジア人という自分自身の人種をここまで強く意識させられることも、 もしずっと日本に暮らしていなかったらなかっただろうなとおもいます。 いま娘の学校にいくと、ほとんどの人種が一つのクラスのなかにいます。 白人も黒人も黄色人種も、アラブ系の人も、南アメリカの人たちもみんな一つのクラスでわきあいあいと遊んでる。 だから祝日などの祝い方は宗教によって全く違うので、 みんながそれぞれの価値観でお祝いできるように先生たちも気を使ってくれています。 そういったアメリカが持つ価値観の『自由』が、今回の大統領選を機に大きく変わろうとしています。 多種多様な生き方、そして価値観が大きく否定され、また差別の時代へと逆戻りしようとしているのです。 多くの自分の知人はトランプが当選した日に泣いていました。 何とも言えないほどの喪失感が、身体のなかにある深い部分に襲ってくるようでした。 それはまさにゆっくりと崩れさっていくツインタワーをスローモーションでみているようなそんな気分でした。 なにかひとつの価値観が消え去っていく、何か一つの時代が終わっていく、 それをただ無力な自分が呆然と眺めているような、真っ暗な『無』にちかい感覚でした。 そして日本から伝わってくるニュースを見てもっと悲しい気持ちになりました。 多くのニュースは経済的な影響について書いてあり、たいていの人の関心は芸能ニュースのほうにあるようでした。 日本人も含めた有色人種の人々が公然と差別されていくことになるということがアメリカの大多数のなかで決定されたこと。 宗教や性別によって差別されることが、公に肯定されようとしていること。 それは決してアメリカに住んでいる人だけにとっての危機ではないはずです。 しかしながら、今自分が希望に思っていることもあります。 現在までに水面下にあった人種差別問題や性差別、宗教の差別などの問題が、 今大きく表面に出てきて、それを大きなメディアのなかでも話し合う機会が増えてきています。 それは今まで語られなかった沢山の問題を解決するための一歩にもなり得るのではないかとも思えるのです。 街を歩いていても、大統領選直後は電車で口喧嘩があったりと日々物騒にはなっていますが、 多くの人達が、この直面している問題をどうにかしようともがいていることを肌で感じます。 日常の中でも、お店の看板や地下鉄の壁に書かれたみんなの気持ちのこもったメッセージの数々から、 何か前向きに変化させたいという気持ちの表れを強く感じとることができます。 友人の学校では先生が子供たちにハートの絵を描かせてそれを写真に撮って、親御さんたちに送ったり、メッセージを送ったりしていました。 子供たちにこの問題をどのように伝えていくべきか、みんなが悩見ながら行動しているのです。 子供たちも子供同士で話し合っています。 娘の親友はメキシコ人で、僕ら家族にとって大事なファミリーですが、現状の問題について僕らも話し合いました。 このようなことがなければなかったであろうコミュニケーションも確かに生まれているのです。 いま大人達がするべきことは自分達がほんとうに大事にしている深い愛情、価値観について、こどもを抱きしめて話してあげる必要がということを聞きました。 そしてそれはいま子供たちだけでなく、誰もの心にとって必要な感情なのだとおもいます。 この大統領選がはじまって8ヶ月から1年のあいだ、たくさんの汚い言葉、暴力、差別的な発言によって無意識のうちに心が傷つき麻痺してきているのだとおもいます。 いまだからこそ『愛情』に焦点をあて心を癒す必要があります。僕自身の心も疲れています。 オバマ大統領がトランプ当選の直後に国民に『シニカルになるのをやめよう』と言った言葉は本当に的を得ているとおもいました。 斜めに構えるのも、自分には関係ないとも言うことは簡単ですが、本当に心からこの問題に立ち向かっていくことができたら、 もしかしたら今という時代は根本的な問題を変えるチャンスなのかもしれません。 その根っこのところにある問題は、アメリカだけの問題ではなく、世界が抱える闇の問題だとおもうからです。 僕にとって今回の受賞があり、そしてこの大統領選の結果は何か偶然ではなく、自分がこのアメリカで経験してきているリアリティそのものを象徴するような出来事におもえます。 アメリカの文化を学び、ここまでやってきて得たものは決してただの素晴らしいことだけでなく、 これから生きていくための課題でもあるのです。 僕もこれからじっくり考えてみようと思っています。 自分の心の持ち方。 僕自身、本当はのんきにいつもワクワクすることを考えていたいです。 平穏で穏やかで、いつも笑顔でみんなでいられる日々をおくりたいです。 これからの生き方について、自分もこの機会にじっくり考えてみようとおもいます。 きっと何か大きな変化がまたここから生まれると信じて。
by kazthehoofer77
| 2016-11-29 13:37
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